日本政府は本当に財政破綻するのか

max999

「国の借金」はなぜ不安に見えるのか

ニュースではよく「国の借金が過去最大になった」「国民一人あたりいくらの負担だ」といった言い方がされます。

ここで言われる「国の借金」とは、正確には主に政府の借金、つまり政府債務のことです。国民一人ひとりが誰かに直接借金しているわけではありません。

家計や企業の借金で考えれば、借金が増え続ける状態はたしかに不安です。収入に対して返済が大きくなりすぎれば、いつか支払えなくなるのではないか、と考えるのは自然です。

しかし、政府の借金を家計や企業の借金とまったく同じものとして見ると、重要な違いを見落とします。政府が何を支払う義務を負っているのか。その支払いはどの通貨で行われるのか。まずはそこを分けて考える必要があります。

財政破綻やデフォルトとは何か

財政破綻という言葉は広く使われますが、ここでは政府が国債の利払いや償還など、支払うべき債務を履行できなくなる状態として考えます。より狭く言えば、デフォルト、つまり債務不履行です。

大事なのは、デフォルトは「借金の額が大きいこと」そのものではないという点です。借金の額が大きくても、支払いが続けられていればデフォルトではありません。逆に、借金の額が相対的に小さくても、必要な通貨を用意できなければデフォルトは起こりえます。

そのため、政府債務を見るときには、単に残高の大きさだけでなく、どの通貨で返す債務なのかを見る必要があります。

借金の額だけではなく、何通貨建てかを見る

日本政府の国債は基本的に円建てです。円は日本の制度の中で発行される通貨であり、日本政府と日本銀行を含む制度全体は、円での支払い能力を持っています。

ここで誤解してはいけないのは、「だから何でも無制限にできる」という意味ではないことです。言えるのは、円建て債務について、単純な資金不足だけを理由に支払い不能になる可能性は低い、ということです。

外貨建て債務の場合は話が変わります。たとえばドルで返さなければならない債務は、円を発行すれば済むわけではありません。必要な外貨を調達できなければ、支払いに詰まる可能性があります。

この違いを見ないまま「借金が大きいから危ない」とだけ言うと、日本とまったく条件の違う国の事例を同列に並べてしまいます。

日本とギリシャ・アルゼンチン・ロシアは何が違うのか

財政破綻の話では、ギリシャ、アルゼンチン、ロシアなどの名前が挙がることがあります。たしかに、これらの国では実際にデフォルトやそれに近い危機が起きました。

ただし、それをそのまま日本に当てはめることはできません。

ギリシャはユーロ圏の国であり、自国だけでユーロを発行できるわけではありません。政府が支払う通貨と、その通貨を発行する制度が国の外側にあるため、日本の円建て国債とは条件が違います。

アルゼンチンは、外貨建て債務、為替制度、インフレなどが絡んできた国です。自国通貨だけを発行すれば済む問題ではなく、外貨で返す債務や為替の制約が大きくなります。

ロシアについては、1998年の危機を念頭に置くなら、固定気味の為替バンドを守ろうとしたことが重要です。一定の範囲にルーブル相場を維持するには、外貨準備を使ってルーブルを支える必要があります。しかし、その余力がなくなっていけば、為替バンドを維持し続けることは難しくなります。つまり、これも「政府債務残高が大きかったから単純に破綻した」という話ではなく、為替レートを守る政策と外貨制約が絡んだ危機です。

一方で、日本政府の国債は基本的に円建てです。そして円は、日本の制度の中で発行できる通貨です。ここが、ユーロを自国だけで発行できないギリシャや、外貨建て債務の制約が重くなりやすいアルゼンチンとの大きな違いです。

つまり、問題は「政府の借金が大きい国はどれも同じように破綻する」ということではありません。その政府が支払うべき通貨を、自国の制度の中でどの程度用意できるのか。そこが重要です。

ただし、この話で分かるのは、あくまで「円建て債務の支払い不能リスク」をどう見るかです。支払い不能になりにくいことと、物価や為替に何の影響も出ないことは別の問題です。

それでも制約はある

だからこそ、ここからは「破綻するかどうか」と「いくらでも支出してよいか」を分けて考える必要があります。ここまでの話は、財政に制約がないという意味ではありません。

政府が円を支出できるとしても、現実の経済にはモノ、サービス、人手、設備といった供給能力の制約があります。供給能力を超えて需要を増やせば、財やサービスが足りなくなり、価格が上がります。輸入品への依存が大きい場面では、円安を通じて生活費に影響が出ることもあります。

したがって、本当の制約は「お金があるかないか」だけではありません。経済全体がどれだけ生産できるのか、必要な人手や設備があるのか、物価や為替にどのような影響が出るのかを見る必要があります。

まとめ

日本政府が財政破綻するかどうかを考えるとき、借金の総額だけを見ても十分ではありません。

財政破綻やデフォルトとは、政府が支払うべき債務を履行できなくなることです。その可能性を考えるには、債務が何通貨建てなのか、その通貨を自国の制度の中で用意できるのかを見なければなりません。

日本の円建て国債については、単純な資金不足でデフォルトする可能性は非常に低いと考えられます。一方で、だから無制限に支出してよいという話ではありません。制約はお金そのものではなく、供給能力や物価、為替への影響として現れます。

次回は、この点をもう少し進めて、「お金を刷ると本当にインフレになるのか」を考えます。

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